A. 教科書を規定する学習指導要領の理念として「思考力」が強調されるようになったため、最近の問題集はタイトルに「思考力」を入れたり、個々の問題に対して「思考力を問う問題」という評価をラベル貼りすることが多くなっていますが、単に「難問」を言い換えただけのケースばかりのように思えます。 あまり気にしない方がいいでしょう。 もともと、物理の問題はすべて(と言ってよく)思考力を問うものです。
A. ふつうは、aとbだけで表すと思っていいです。
ただし、「aを用いて表せ」のように、一文字だけのケースは、aを答えに含め、他の文字も使用して答える場合があります。 aがすでに判明し、aへの代入作業を省きたいとき(代入すると式が複雑になるとき)に用いられます。あるいは、aで誤っても、次の答えに連動させない配慮の場合もあります。 一文字と言いましたが、質問のケースも該当するかもしれません。
A. 確かに、解答の文字指定がない場合には迷います。一般的には、途中で現れた文字は用いていい です。ただ、代入すると、答えの表記がシンプルになる場合は、代入するのが自然でしょう。
出題者は、問1で誤っても、問2以下に連動しないようにdを提示してくれることもよくあります。問1の答えに自信が持てないのなら、dを用います。迷うケースは両方書く手があります。
A. 自動車が進むときも同じで、駆動輪で地面を後ろ向きに押すことによって、前向きの推進力(実体は静止摩擦力)を得ています。駆動輪はエンジンにつながるタイヤです。車体の前進速度とタイヤの回転速度の合成のお陰で、地面との接触部の速度は0で、静止摩擦になります。
一方、駆動輪でない、転がるだけのタイヤでは、まさに自動車の運動が邪魔され、後ろ向きの摩擦力を受けています。
ついでですが、走っている車を急ブレーキで止めるとき、タイヤの回転を止める(ロックする)と、スリップして小さな動摩擦でしか止められません。 タイヤが滑らないように回転させながら静止摩擦を利用した方が早く止められるので、急ブレーキを踏むと、ABSという装置が働き、スリップを軽減できるようになっています。 (ABS:Anti-lock Break System 車体のスピンを防ぎ、ハンドルでのコントロールも維持できる)
Q4. 推進力については汽車や電車でも同じでしょうね。
A. 同じです。問題集などで、推進力が車体の機関部で前向きに出現し、車輪では後ろ向きの摩擦力になっている図を見かけることがあります。問題を解く上では困らないのですが、理解が浅いとしか言いようがありません。機関部によって車輪が回され、接触するレールからの反作用が推進力です。
機関車の車輪では前向きの推進力(静止摩擦力)、連結車両の車輪では後ろ向きの摩擦力ということですね。
Q. 宇宙ステーションでは無重力で物が浮いていますね。地表から h = 400 km ぐらいの高さを回っているとのことですが、それだけ離れると万有引力が事実上なくなってしまうということでしょうか。
A. とんでもない誤解です。万有引力はしっかりあります。宇宙ステーション内で見れば、物体には遠心力が働き、万有引力とつり合っている ので、物体は浮いているだけです。「無重力状態」と言った方がいいでしょう。地球の半径は R = 6400 km あるので、宇宙ステーションは地球の表面スレスレを回っているようなものです・・・宇宙から見れば。
物体にはたらく万有引力は地表にあるときより弱くなっているのは確かです。どれくらいになっていますか?
A.内部エネルギー U は絶対温度 T に比例する ので、同じ温度変化 儺 なら どのような変化であれ、内部エネルギー変化 儷 は同じになります( y = a x なら 凾 = a 凅 a:定数 )。
そこで、定積変化に目を向けると、仕事 W が0なので、吸収熱量を Q として、第1法則は 儷 = Q +0 一方、定積では Q = n CV 儺 したがって、 儷 = n CV 儺 定積で調べたこの結果は 任意の変化に適用できる・・・というわけです。
NewQ2. U = a T であり、儷 = a儺 そして、定数 a を定めるには、定積変化を利用すればよいということですね。 数学的には 分かるんですが・・・
A. では、もう少し物理らしくしてみます。
温度 T の状態 A から温度を 儺 だけ上げるとします。 定積でも 定圧でも いろいろな変化で上げられます。
P V 図上では T + 儺 の状態は一つの等温線上にあります。それらは内部エネルギーが同じ状態であることに注意してください。
すると、状態 A からの内部エネルギーの増加 儷 は、定積変化 A → B で測ったものに等しいことになるでしょ。 等温曲線 T + 儺 上のどの位置 X に達していたとしても です。 A → X 間が直線である必要もありません。
そもそも、熱力学 第1法則 儷 = Q + W において、Q は「吸収した熱量」、W は「された仕事」と表現されますが、いずれも「差し引き」を意味しています。熱力学では断りがなければ、「差し引き」です。
第1法則を用いて 儷 と W から Q を求めた場合も、Q は差し引きです。 ただ、熱の吸収(あるいは放出)が続いているケースがふつうです。
たとえば、熱効率 e の場合は、次のようにきちんと断っています。
1サイクルについて、 e =(実質的にした仕事)/(真に吸収した熱量)
Q3. 熱量と仕事は「差し引き」と分かりました。 内部エネルギーもそうでしょうか?
A. 内部エネルギー U は気体の状態で定まる量です。 第1法則の 儷 はその「変化」であり、(後の U )−(前の U )です。 途中の増減は関係ありません。
あえて途中の増減が知りたければ、内部エネルギー U は絶対温度 T に比例する ので、温度の増減を確かめてから計算に入ることになります。
Q4. 儷 も「差し引き」には違いないように思えますが・・・
A. 結果的にはそうですが、「差し引き」という認識は希薄です。 内部エネルギー U は熱量 Q や仕事 W とは一線を画しています。
第1法則は ある状態 A から状態 B に変化する際のエネルギーの出入りを扱っています。 A から B への変化の過程にはいろいろなものがあり、熱量 Q と仕事 W は過程によって変わりますが、 内部エネルギーの変化 儷 は過程に関係しないという認識が大切です。
儷 = Q + W は、(後の U )=(前の U )+ Q + W とした方が理解しやすいかもしれません。 Q と W が流入したエネルギーを表しています。 ていねいに言えば、正の場合が流入、負の場合が流出です。
Q5. エネルギーである U と、エネルギーの出入りを表す Q や W との違いを意識せよということですね。
A. その通りです。 エネルギーの方が格が上の量です。 Q と W は同格の量です。
力学では仕事 W しか現れませんが、同様です。 仕事よりエネルギーが格上です。
そして、運動エネルギーの変化が仕事に等しいのでした (仕事=運動エネルギーの変化)。
熱力学第1法則と類似しています。
A. 振動数の公式は、音源が動く場合に波長がどうなるかを考えて導いたものです。まず、そこをしっかり復習してください。音源が動くから波長が変わる のです。
このとき、音速は音源の速度によらないことが本質的に重要です。観測者の動きは波長には関係ありません。反射板も音源の役割をするので、板が動けば波長を変えます。
A. できます。 外力fを点 Q(正確にはレールとの接点)で加えているとします。 角速度 ω が一定の場合には、力のモーメントのつり合いが成立します。
電磁力 F の作用点は OQ の中点なので、 F × a/2 = f× a ∴ f = F / 2
点 Q での速さをvとすると、外力の仕事率 P は、 P = fv です。 円弧に沿って1秒間にv〔m〕移動させるからですね。 そして、等速円運動の公式 v = rω で r = a なので、 P = f・aω = F a ω / 2
あとは F に問(4)で求めた値を代入してください。
実は、外力を加える位置は棒のどこでもよいのです。 点 О からr離れた位置とすると、モーメントのつり合いは、 F × a/2 = fr ∴ f = F a / 2 r
したがって、 P =fv=f・rω = F a ω / 2
f は r によって変わりますが、仕事率 P に変わりはありません。
エネルギー保存則の観点なら、外力の仕事はジュール熱に等しく、P = R I2 サラッと解決できます。
Q2. 先ほどの問題 125 (新版 130) ですが、回転する導体棒に生じる誘導起電力 V をファラデーの電磁誘導の法則で求めています。問題文の誘導に従えばそうなりますが、公式 V = v B l でも出せるのではないでしょうか。 エッセンス(下)p103(新版 p109) のように。
A. 導体棒に沿って速さが変わっているので、vとして平均の速さを用いれば OK です。
点 О での速さは0で、点 Q では aω なので、 v =(0+ aω )/2
あとは l = a より、 V = v B a = B a2ω /2 ですね。
A. 初めての共通テストで、どのような問題が出されるのか、大きな関心を集めました。 「物理」全体としては、センター試験と大差ないように思います。 計算力より定性的な思考力が、今まで以上に重視されている ようです。
質問の問6ですが、結論から言いますと、難問ではない と考えています。
まず、状況を確認すると、磁場中で2本の導体棒が滑らかに動き、右側の棒 a だけに初速v0 を右向きに与えます。 動き出した a には誘導起電力 V が生じ、電流 I が時計回りに流れ、2本の棒には電磁力 F が働きます。 棒 a は減速され、棒 b は右に加速されます。 ここまでは 問4と問5で誘導しています。
問6は 2本の棒の速度の時間変化ですが、以上の認識ができれば、4つの選択肢のうち、B か C に限られます。 b にも誘導起電力が生じますが(回路としては a とは逆向き)、a の方が速いので、電流や電磁力の向きに変わりはありません。 a の減速、b の加速が続きます。
やがて、a と b の速さは等しくなります。 すると、両者の誘導起電力は等しくなって電流が止まり、電磁力がなくなります。 結局、慣性の法則による等速度運動に入ります。
以上、導体棒に生じる誘導起電力 V = vBl で考えてきましたが、ファラデーの法則で考えてもいいでしょう。 途中は上向きの磁束が増し、a と b の速さが等しくなると、磁束は一定になります。
最終速度vf を決めるのが運動量保存則です。2つの電磁力の合力は0なので、運動量が保存し、a と b の質量が等しく、m とおくと、 mv0 =mvf+mvf から vf =v0 /2 こうして、正解は B になります。
確かに、このようなケースで運動量保存則に気づけというのは、共通テストとしては過酷な要求と思います。 物体系に対して外力が働かない場合、運動量保存則が成り立つ というのが基本ですが、外力が働いても、その和が0であればいい ことまでの認識が求められています。
運動方程式で考えれば、B は選べます。 電磁力の大きさFが等しく、質量mが等しいので、加速度の大きさが等しいのです。 v−tグラフの接線の傾き(絶対値)がたえず等しいということです。グラフは対称的になるはずです。
なお、エネルギー保存に目を向ければ、C の vf =v0 /√2 の場合、全運動エネルギーを求めてみると、初めの a の運動エネルギーと同じであることが分かります。 電流が流れている導体棒には抵抗があるので、ジュール熱が発生しているはずで、C はありえないと判断でき、消去法で B にたどり着けます。
誘導が丁寧で(特に問5)、色々と工夫された設問と思います。 選択肢があるということは、完全に解く必要がないということ でもあります。 基本の学力でも工夫すればできる、思考力を試すとはそういうことではないでしょうか。
人を矢印 AB で表す。鏡像 A’B’ は鏡に対して対称な位置にできる。 目 E と A’、B’ を結ぶ直線を描けば、鏡との交点 P、Q が確認できる。
P での反射により頭の先 A が見え、Q での反射により足もと B が見えるので、PQ 間の鏡が必要な部分である。
△EPQ と △EA’B’ は相似で、相似比は1:2だから、PQ = A’B’/2 = AB /2、つまり、鏡は 身長の半分でよい。